イギリスのサッカー文化 ~月々にかかる費用について~
こんにちは!イギリスのコウです。
筆者はこんな人:
・大学まで日本→イギリス大学院留学→現地就職
・イギリス・ボルトンワンダラーズ遠征の通訳担当
・海外生活5年目
・J3カターレ富山ユース出身
本記事ではイギリスで子供がサッカーをするにあたってかかる費用について書いています。
まず基本情報として、育成年代(小学生から高校生)の選手がイギリスでサッカーをする場合、大きく分けて以下4つのいずれかの組織に所属してプレーすることになります。
- アカデミー(各プロチームの下部組織:エリートスポーツ)
- デベロップメント(アカデミー予備軍:アカデミーのコーチの元で1年間プレーをし、能力が認められればアカデミーに加入できる可能性があります)
- グラスルーツ(プロやエリートスポーツに該当しない組織)
- プライベート・サッカースクール(民間の会社によって提供されるコーチングサービス)
(イギリスでは学校の部活でサッカーをするという文化はありません。グラスルーツは日本で言うところの、大学のサークルみたいな感じでしょうか。)
まず初めに、イギリスのアカデミーでサッカーをする場合は、選手は完全無料となります。これは、FA(イギリスのサッカー協会)と各クラブによって資金が賄われているからです。FAおよび各プロクラブによる、育成年代に対するアプローチの優先順位は「地元選手の育成」であり、収益をあげることではありません。
日本のJリーグ下部組織(小学生年代)だと、年会費や月謝を支払うことでプレーできる場合がありますが、イギリスではいくらお金を積んでも、サッカー能力が十分高くない限り、アカデミーでプレーすることは許されていません。
次に、グラスルーツのサッカーもイギリスでは基本的に無料となっています。もしかしたら、自分のユニフォーム代や、試合日のみ5ポンド(約1000円)ほど請求されるかも知れませんが(移動費、審判代、グラウンド使用料のため)、基本的には無料でプレーすることができます。
デブロップメントに所属する選手においては、クラブによって異なる費用が請求されます。例えば、現在3部リーグに所属するボルトン・ワンダラーズの場合、一回のトレーニングセッションにつき3.5ポンド(約650円)がかかります。ボルトン・ワンダラーズのデブロップメントに所属する各年代の選手たちは、週に1回のトレーニングを行っているので、一ヶ月あたり14ポンド(約2600円)支払う必要があります。
他にも、イギリスにはプライベートのサッカーコーチング会社があり(日本でいう街クラブ)、ここでプレーするにはお金を支払う必要があります。なぜなら、これらの会社はビジネスのために運営されているからです。イギリス人の間では、これらの会社によって提供されるサッカーコーチングの評判は、あまり良いものではありません。というのは、これらの民間企業は所属選手に対して、いかなる機会(教育機会、プロ昇進機会、雇用機会など)も提供しないからです。
最後に、各プロクラブのスカウトは、将来有望な子供をアカデミーに加入させるため、7歳に到達した子供からスカウトの対象とし、スカウトによって声をかけられた子供がU9〜U16年代のアカデミーに加入できます。当然、前述した通りアカデミーでの活動が許可された場合は選手が負担する費用は発生しませんし、さらにU16~U18年代のアカデミーへの昇格が許された選手たちは、なんとクラブから給料を受け取ります!
このように、日本とイギリスの育成年代のシステムは大きく異なります。その背景には、FAによる積極的な経済支援があり、これを可能にするだけの富を、イギリスのサッカービジネスが生み出していると言えます。
育成年代への資金投資は、日本におけるサッカー普及という観点でも、議論の余地がある興味深いトピックではないでしょうか?本記事が少しでも参考になったのであれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました!